「夏物語」感想文ー女性性と生きること

カテゴリー カルチャー

これから書く内容は、センシティブかつ個人的なので、ここに書くか迷いましたが、だからこそ共有する価値があるかなと思いました。

川上未映子さん著「夏物語」を読みました。今読めておいて、心からよかった!

以前読んでいた「乳と卵」の拡大版とは知らなかったけど、読み始めてすぐ気づきました笑。
ちなみに欧米で発売されている「Breasts and Eggs」は夏物語の内容のようです。

本で扱われている内容は、全体的には女性性です。

豊胸したい主人公の姉や、
体の発育・それによる周りの女子たちの変化に、心が追いつかずに嫌悪感さえ示すその娘。

貧困、家族というテーマも織り交ぜつつ、もっとも重要なテーマが生命について。
それぞれ重いテーマなんだけど、関西弁のリズムでぽんぽんと進んでいき、主人公の目線で物事を体験しているような
臨場感ある物語でした。

ここからはネタバレ含むので、内容を知りたくない方は、Uターンをおすすめします〜〜〜!

*****

私は、生まれてきてよかったと思っている。もともとかなり楽観的だし、家族も友達も大好き。
将来やりたいこともある、行きたいところだって数え切れない、食べることに困ることもない、幸せ。

で、その幸せの中には、私はいつかだれかと結婚して、子どもを産んで、家庭を持つことが、ぼんやりと含まれている。
…「含まれていた」かもしれない。

主人公は、作家の仕事が軌道に乗り、満足した生活を送っていたのに、ある感情が湧き上がってくるのを少しずつ感じていく。

それは「子どもが欲しい」という思いだった(自分の子どもに会ってみたい、という表現がされていた)。
でも、パートナーがいない。そして、なにより、セックスができない(死にたくなるから)。
そこで見つけるのが「精子バンク」。

わたしは、今は子どもが欲しいとは思わない。でも将来、子どもが欲しいと思った時に、パートナーがいなかったら?
主人公は、その点で、まさにわたしに重なる存在だった。

「あ、そっか。わたしにも、これ、将来考える必要がある問題かも」
そう思った時、いずれ家庭を持つことが当然のように頭の片隅にはあったわけだけど、
それって当然ではなくて、選択肢の一つにすぎないことに気づいた。

パートナーがいたとして、どちらかが妊娠できない要因を抱えている確率だってゼロじゃない(本にはこのパターンも出てくる)。
で、べつにこれは個人的には落ち込む問題ではないんだけど、妊娠したければタイムリミットもある。

本の中には、
子どもを持ちながら仕事もこなすシングルマザー、
仕事一筋・バリキャリでパートナーも子どもも持たない選択をした女性、
自分の家族に優越感を感じたいだけのママ友グループ、
家庭で夫の労働力としてしか認識されていない主婦…
それはさまざまな女性が出てくる。

これは全部わたしだ。これからの選択によって、誰にでもなりえる。
良し悪しではなく、どの選択も、自分が納得して選んでいく限り間違いはない。

話を戻すと、
主人公は、精子バンクについて調べるにつれ、それを利用して生まれてきた人たちのコミュニティに関わるようになる。
自分のルーツを知りたくても知れなくて葛藤する男性や、
「生まれてこなければよかった」と思う女性と出会うんだけど、これがわたしには衝撃だった。

命は尊い、祝福されるべき。今までそう信じて疑わずにいられたのは、かなり幸運だったのかもしれない。そのとき初めて気づいた。

その人は幼少期に性的虐待を受けていた。
「自分の子どもに会ってみたい、だなんて利己的すぎる。こんな思いをする人をこれ以上世の中に増やしてはいけない。」
「生まれて数日で、痛みを感じながら亡くなっていってしまう赤ちゃんがいるけど、彼らの命にはなんの意味があるのか。
生まれてこなければ、幸せだったのではないか」
みたいなことをその人が言うんだけど、それがわたしの心にずっと残っている。

主人公は悩んで、結局、子どもを授かるという選択をする。
「間違いかどうかはわからない。だけど、賭けたい。わたしの子どもに会いたい」みたいなことをいっていた。
(本が手元になくて、文はところどころ曖昧。。!)
精子バンクは利用せず、信頼する男性との体外受精となった。

ラストの生命の誕生の瞬間、神々しささえ感じた。

読み終わった後も、生まれてくる子どもの幸せって何かな、と時々考えた。
結局わからない、赤ちゃん当人に聞かないことには。

だけど、やっぱり、どんな命も尊いことに変わりはない。
そして「生まれてこなければよかった」と思う人は、愛情や環境や社会の仕組みづくりによって、
きっと減らせる。というか、そういう社会を、わたしたちが作り上げなければいけない。

生まれてくるってやっぱりすごいこと、生きているって、もっとすごいことだから。

そして、
パートナーを持つ・持たない、
籍を入れる・入れない、
子どもをもつ・もたない、
これらは全部正しい選択(あと夫婦別姓も)。

いまは、この選択によっては社会が喜び勇んで揚げ足を取っていってる状況。どう考えてもおかしい。

わたしが将来子どもをもつ・もたないは置いておいても、
ジェンダーギャップの解消も含めて社会が変わるよう声を上げ、
より良い社会を次の世代に残していくことは義務だと思っている。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
これからは、またちょくちょく更新していきたいな笑

こんにちは、しおりです。ヨーロッパが好きすぎて、新卒OLを2年で辞めドイツでフリーランス始めました。
主に翻訳(英⇄日)、ライター、ときどき写真も撮ります。食べることと音楽と映画と、とりあえず多趣味です。

「夏物語」感想文ー女性性と生きること” への2件のフィードバック

  1. 更新されるたびに読ませていただいています。次回のブログも楽しみにしています。

  2. ココさん
    お返事遅くなりました、更新滞っていてすみません。。本当に励みになります。ありがとうございます!

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